災害対策

2024.11.25

緊急時に役立つ情報収集法!空から見た自然災害の状況把握

緊急時に役立つ情報収集法!空から見た自然災害の状況把握

目次目次

自然の脅威から命を守る

近年ますます激甚化する自然災害。自然の脅威は、突然私たちの身に降りかかってきます。
襲いかかる大地震、あっという間に建物を飲み込んでしまう津波、急激に浸水・冠水を引き起こす集中豪雨、刻々と迫りくる台風など...残念ながら私たち人間は、この自然の脅威から逃れることはできません。ひとたび大災害が発生してしまったら、被災状況を確認しながら自身の命を守る行動を優先するしかありません。大災害が発生したとき、最も重要であり最も優先すべきは、人命を守ることです。

地震による被害
集中豪雨による被害

自分の身を守るために必要な方法のひとつが、被災状況を正しく把握することです。混乱する被災現場で、SNSなどで動画や画像が飛び交うなか、私たちはどのように被災状況を把握すればいいのか?について、考えてみたいと思います。

人の目線と空からの目線

遠い昔、人々は目の前で起きている状況を言葉や合図などで伝え、石碑やモニュメント、書物などで自然災害の恐ろしさを後世に伝えてきました。その後、文明が発達し、通信手段や観測の技術が進むにつれ、得られる情報の量・速さ・正確さなどが各段に向上していきました。
そして現在、SNSの普及によって、メディアよりも早く目の前の情報が写真・動画で拡散できるようになりました。
しかし、それらの情報は全てが正確とも限らず、また被災状況の全てでもありません。被災状況は、目に見える範囲の情報だけではとらえることができないのです。

例えば地震だったら。
人里離れた山間部で地震による土砂災害が発生して幹線道路やライフラインが寸断され、救助の手や救援物資の輸送に支障をきたし孤立してしまうかもしれません。

土砂災害で道路が寸断

例えば豪雨だったら。
短時間で大量の雨をもたらす「線状降水帯」などの影響で、上流域で降り続いた雨が下流や低地の街で下水道からの逆流による内水氾濫や河川の氾濫を引き起こし、水没の危険や交通インフラの麻痺が発生するかもしれません。

水没で交通インフラが麻痺

例えば津波だったら。
遠く離れた震源であっても、地震の揺れが小さい地域でも、海岸沿いの集落に津波が襲いかかるかもしれません。今後、高確率で発生すると予想されている南海トラフ巨大地震では、津波の到達が数分後には5mを超える場所や最大で30mを超える場所も想定されています。

津波で多くの建物が流される

これらの被害は、目の前にある情報だけではなかなか想像することができません。そこで有効となるのが、地上から見る人の目線では捉えきれない、空から見る広範囲な状況把握です。では、どうやってその情報を集めたら良いのでしょうか。

航空測量事業者としての使命

災害時の状況を把握するために、航空測量会社の技術を活用する方法があります。パスコは、空間情報事業者の使命として、自然の脅威に常にアンテナを張り、一度、その危機を察知したときは、持てる技術と撮影手法を使って被災状況の把握に有効と考えられる地図情報を提供しています。
情報を収集するのは、海底や河底をはかる「船舶」、道路を走行しながら周辺情報を一度にはかる「MMS(モービルマッピングシステム)」、上空を飛行しながら地上の様子をとらえる「ドローン」・「航空機(飛行機やヘリコプターなど)」、そして、宇宙空間というはるか遠くからでも地上の様子がわかる「人工衛星」といったさまざまな計測技術です。天候や被災地の状況を加味しながら最適な方法を導き出し、それぞれに搭載したカメラやセンサーを使って、多角的な視点で状況を捉えています。

測量・計測技術

その中で、今回は、空からの視点で状況把握ができる「航空機」と「人工衛星」を比較し、それぞれがどんな特徴を持ち、どのようにして被災状況の把握に取り組んでいるのかを、紹介していきます。

視点の違いで捉える範囲は変わる

大災害が発生すると、救助活動を安全かつ最優先に対応するため、一般の航空機には飛行制限がかかるケースが発生します。その時に有効になるのが人工衛星です。地上から約500~600㎞離れた宇宙空間から地表面を観測する人工衛星は、宇宙空間から広域な視点で被災状況の広がりや地形の状態を一目で把握することができます。「合成開口レーダ-(SAR)衛星」は、全天候型で昼夜を問わず高解像度で地表を観測できるため、雲や雨などの気象条件に左右されずに撮影することができ、災害時の状況把握に役立っています。

合成開口レーダ-(SAR)衛星で撮影した画像:噴火後の草津白根山(2018年1月24日撮影)

地上から数百m~数km上空を飛ぶ航空機は、特定の地域を重点的に撮影することができます。また、光学カメラや赤外線カメラ、レーザースキャナーなど多様なセンサーを搭載することができ、高精度なデータで、より詳細な状況を捉えます。

航空写真の例:宮城県女川町(2011年3月29日撮影)

このように、あらゆる情報を集約して被害の情報を正確に把握することで、より包括的な情報を提供し、救助活動や二次災害の予防、復旧・復興支援の活動に役立てることができるのです。
ここで、航空機と人工衛星でとらえた被災状況の写真を比較してみます。捉えている範囲の違いが一目瞭然でわかります。まずは、平成30年北海道胆振東部地震の土砂災害の様子を比較してみます。1枚目の航空機の写真では、道路が寸断した状況がわかり、2枚目の人工衛星の画像では、画像解析によって広範囲の土砂移動痕跡などを判読しています。

航空写真:勇払郡厚真町富里で道路が寸断し一部は川へ流入
衛星画像:画像解析によって土砂移動の痕跡などを自動判読 ©Airbus DS 2018

つぎに、平成27年9月関東・東北豪雨(台風18号豪雨)の氾濫の様子を比較してみます。1枚目の航空機の写真では、河川の周辺の氾濫状況や家屋の浸水している様子がわかり、2枚目の人工衛星の画像では、より広域の被災状況が一目でわかります。

航空写真:下妻市上空から常総市を撮影した浸水状況
衛星画像:茨城県常総市付近の広域な状況把握 ©Airbus DS 2015

社会的使命としての災害緊急撮影

上空から広範囲に被災状況をとらえることは、単に記録を残すことだけではありません。大災害時の全容把握に挑み、蓄積された成果は、未来社会に対する重要なメッセージを伝える手段です。そして、災害を乗り越え、早期の復旧・復興に向けた活動を支援するものでもあります。
だからこそ、さまざまな撮影能力を駆使しながら、今なお、その技術を磨き続けています。SNSの普及により利便性が向上している反面、フェイク動画・画像拡散による偽・誤情報の流通が社会的な課題にもなっています。災害の状況把握には、信頼できる情報を迅速に捉えて、最適な判断を下すことが重要になります。パスコはこれからも、信頼できる貴重な情報を、迅速に提供し続けます。
それが、未来社会への希望を灯し災害を乗り越える力を与えるため。そして、復興への道を照らし次世代に勇気と知恵を伝えるためと信じて。
(文:空野 航)


■関連リンク

パスコ 会社紹介動画
https://www.youtube.com/watch?v=ZHOkOdymsi0

災害緊急撮影紹介動画
https://www.youtube.com/watch?v=EVs59ujqdzk

大自然の脅威「語りかける国土」 サイト/Webブック
https://corp.pasco.co.jp/disaster/
https://www.pasco.co.jp/ebook/kokudo/

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