温暖化を超え、いまや地球沸騰化時代
CO2排出をなくすにはどうしたらいい?
地球温暖化がとまりません。平均気温は年々上昇し、もはや「地球沸騰化」といわれるほど。主な原因は、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料で発電する際に排出される二酸化炭素CO2ですが、温暖化対策が議論される一方で排出量は増加の一途をたどっています。CO2排出ゼロをめざす「脱炭素」を実現させない限り、地球の未来はありません。
そこで大きな役割を担うのが、太陽光、水力、風力、地熱など自然の力を利用する「再生可能エネルギー」です。その名のとおり枯渇することなく繰り返し利用できるエネルギーで、発電の際にCO2を排出しないため、脱炭素社会をめざすうえでの切り札ともいわれています。
なかでも、いま日本で特に大きな期待を集めているのが「洋上風力発電」です。持続可能な社会を実現するためにも、再生可能エネルギーと洋上風力発電について、しっかり学びたいと思います。
お話しいただくのは環境文化コンサルタント事業部のお三方。事業推進部の濱本さん、環境技術部の都築さんと徳弘さんです。
目次
プロフィール
話し手 濱本 大地
株式会社パスコ 環境文化コンサルタント事業部 事業推進部 環境事業推進課
前職は環境分野における分析・海洋調査の技術職。2021年にパスコに入社した後は、環境案件における技術営業支援や企画に従事し、主に洋上風力関連の案件形成を担当。現在は環境事業推進課の係長。
話し手 都築 純
株式会社パスコ 環境文化コンサルタント事業部 環境技術部 技術一課
2014年パスコ入社。主に海域の環境アセスメント業務に携わったのち、現在は再生可能エネルギー導入に向けた調査業務、適地選定業務に従事。
話し手 徳弘 ほのか
株式会社パスコ 環境文化コンサルタント事業部 環境技術部 技術一課
2022年パスコ入社。主に再生可能エネルギーにかかわる環境アセスメント業務に従事。
聞き手 樋口 沙紀子
地球の学校 編集部
日本の再生可能エネルギー導入は始まったばかり
再生可能エネルギー先進地域といわれる欧州では、スペインで46.3%、イタリアで40.3%、イギリスとドイツで39.6%と軒並み高く、EU全体でも37.1%と高い導入率を示しています。
とりわけ四方を海に囲まれたイギリスで導入が進み、いまでは再生可能エネルギーの1/4を占めるほど。2030年にはイギリス全家庭に供給できる電力をまかなえるようになるまで、洋上風力発電を拡大することを目標に掲げています。
日本で洋上風力発電が選ばれる理由とは
何よりも、四方の広い海を使えるので、国土が狭い・平地が少ないという地理的制約は受けません。日本の国土の面積は世界で61番目ですが、排他的経済水域(EEZ)を含めた海域面積は世界第6位。この広い海域を電力資源として有効に活用できます。
また、もともと昼夜を問わず発電できる風力発電は、ほかの再生可能エネルギーに比べて発電効率が高いのですが、洋上は陸上よりも強い風が安定して持続的に吹く場所が多いうえに、周囲に障害物となる地形がないため、より効率的に発電できます。
さらに、広い海上を活かして発電設備の大型化や大規模化をはかることで、事業効率を高めつつ低コストを実現することも可能です。将来性あふれる分野といえます。
国はいま、日本全体の洋上風力発電の発電容量※2を、2030年までに10GW(ギガワット)、2040年までに30〜45GWに増やすことを目標に掲げています。30GWというと大型の火力発電所30基分に相当する容量ですので、かなり意欲的な目標数値といえるでしょう。
※1 海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律
※2 案件ベースの目標値
また、2024年には、発電設備の設置対象海域を広げるための法律も閣議決定されました。これに伴い、海岸から離れた水深の深い海域でも設置できるよう、風車を設置した構造物を海上に浮かべて海底に係留する「浮体式」の実用化に向け、官民をあげた技術開発も進められています。
導入には場所選びが課題?
洋上風力発電は非常に大規模な設備です。大きなものですと風車の直径が200mにもなる構造物を洋上に何基も設置するのですから、工事も大がかりですし、クリアしなければならないことがたくさんあります。
漁業に携わっている方、釣りなどのレジャーで利用する方、観光業に従事している方、そして沿岸に住んでいる方々など、きわめて幅広い範囲での影響を考慮しなければなりません。
ここまで、地球沸騰化の時代に挑む世界各国の状況から、日本の取り組み、洋上風力発電導入のメリットとクリアしなければいけない課題をお聞きしました。
そしてやっと、実現に向けたスタートラインに立ったところです。
このあとの後編では、洋上風力発電導入をめぐる想像を超える数々の取り組みについて、詳しくお話をうかがいます。どうぞご期待ください。
後編はこちら
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