増え続ける空き家から地域社会をどう守る?

増え続ける空き家から地域社会をどう守る?

空き家を「放置させず」「増やさず」「活用する」

街を歩いていて「あの家、人が住んでいなさそう」などと感じたことはないでしょうか。今、全国で空き家※の数が増え続けており、景観や住環境、地域の安全などの面から社会問題になっています。なぜ空き家は増えているのでしょうか。また、その対策はどうなっているのでしょうか。社会情報部 都市計画課の中津好徳さんにお話をうかがいました。

※法律などに関する説明については「空家」「空家等」と表記します。

プロフィール

話し手 中津 好徳 (なかつ よしのり)

株式会社パスコ 東日本事業部 第二技術センター 社会情報部 都市計画課

2003年入社。主にハザードマップや防災計画の策定など、空間情報を用いた地域防災力向上の支援業務に従事。現在は、空家等対策計画や立地適正化計画の策定など、持続可能な都市づくりの支援業務に取り組む。

プロフィール

聞き手 伊東 克啓 (いとう かつひろ)

地球の学校 編集室

7戸に1戸が空き家! 増加の実態と地域への影響

伊東
私は空き家だった親戚の家を建て替えて住んでいますが、住み始めたときに近所の方から感謝されました。近くで泥棒が入ったこともあり、不安を感じていたそうです。こうした空き家をめぐる状況は、他の地域にもあるのでしょうか?
中津
はい、空き家は全国的に増えています。放置された空き家は、景観の悪化や近隣への迷惑に加え、ゴミの不法投棄や侵入、放火などのリスクもあり、地域の生活環境を悪化させる要因になります。ご近所の方が不安を感じていたのも当然です。伊東さんが空き家を建て替えて住まわれたことで、安心されたのではないでしょうか。
伊東
不安を感じている方は多いのですね。空き家の数は、全国でどれくらいあるのでしょうか?
中津
2023年に行われた国の調査によると、全国で約900万戸の空き家があります。住宅総数は約6,500万戸ですから、空き家率は約13.8%、つまり7戸に1戸ほどです。
ただし、この中には賃貸用の空き部屋や別荘なども含まれています。それらを除いた、用途の定まっていない空き家は約390万戸あります。
人口減少が進む中、空き家は今後も増えると予測されています。適切な管理が行われない空き家が増えると、生活環境への悪影響が深刻化するおそれがあります。
全国の空き家率の推移(1978年〜2023年)
〇出典:総務省統計局「令和5年 住宅・土地統計調査結果」

問題のある空き家を「放置させない」仕組みとは?

伊東
それは心配ですね。何か対策は取られているのでしょうか?
中津
はい。本来、空き家の管理は所有者の責任です。しかし、相続放棄や管理されていない空き家が増え、全国的な問題となりました。そこで国は、2015年に「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」を制定しました。この法律に基づき、自治体は空き家の実態調査や対策計画の策定を進めています。
空き家対策に関する情報を紹介。国土交通省の特設サイト
(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/index.html)
伊東
具体的には、どのような対策があるのでしょうか?
中津
1つ目は「問題のある空き家を放置させない対策」です。
自治体は空家法に基づき、倒壊の危険性が高いなど、周囲に悪影響を及ぼすおそれのある空き家を「特定空家等」に認定できます。特定空家等の所有者に適切な管理を促し、状況の改善を求める「助言・指導」を行い、それでも改善が見られなければ「勧告」を出します。勧告を受けると、住宅用地に適用される固定資産税の軽減措置が解除されます。
さらに、2023年の空家法改正では、より早期に対応できるよう、放置すると特定空家等になる可能性のある空き家を「管理不全空家等」に認定できるようになりました。
伊東
空家法が施行されるまでは、住宅として建っていれば税金の優遇が受けられたのですか?
中津
そうです。その仕組みが、空き家の放置を助長していた面もあります。
特定空家等については、勧告に従わなければ「命令」を、それでも改善が見られなければ自治体が所有者に代わって建物を解体できる「行政代執行」を行うことも可能です。代執行にかかる費用は、所有者に請求されます。

空き家を「増やさない」ためにできること

中津
2つ目は「空き家を増やさない対策」です。
空き家は、相続をきっかけに発生することが多くあります。
例えば、地方出身者が都会で家を建て、親の死後に実家を相続するケースです。思い入れから処分できず、管理が行き届かないまま問題のある空き家になってしまう。こうした事例が全国で増えています。
さらに、所有者が分からず、管理されない「所有者不明土地」の増加も深刻です。こうした土地は周辺環境や防災対策に悪影響を与え、その面積は九州より広いといわれています。
原因の一つは、相続登記が任意だったことです。
そこで国は、相続後3年以内の登記義務化や、不要な土地を手放せる「相続土地国庫帰属制度」などの対策を進めています。
伊東
それほど広大な土地が誰のものか分からないとは驚きです。ただ、家族間でも相続の話はしにくいですね。
中津
そうですね。国は「住まいのエンディングノート」の活用を推奨しています。この冊子をきっかけに、所有者が元気なうちに住まいや相続について話し合うことで、空き家の発生を予防できます。
実家を売るのか、貸すのか。所有し続けるならどう使い、どう管理するのか。早めの準備が、空き家を増やさないための第一歩です。
国土交通省の特設サイトからダウンロードできる「住まいのエンディングノート」
(ダウンロードサイト
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr3_000054.html)

空き家の豊かな可能性を「活かす」

伊東
「放置させない」「増やさない」のほかにも、対策はあるのでしょうか?
中津
あります。3つ目は「空き家を活用する対策」です。
空き家を相続した場合、「使う」「売る」「貸す」という選択肢があります。しかし、空き家によっては民間市場では流通しにくいことがあります。こうした課題を解決する仕組みが「空き家バンク」です。自治体が空き家の情報を集め、利用希望者とマッチングする制度で、全国版空き家バンクを使えば、地域を問わず全国の空き家情報を検索できます。
さらに、移住・定住支援や改修補助を組み合わせて、空き家の活用を後押しする自治体もあります。
伊東
自治体が支援してくれるのは心強いですね。
中津
はい。まちづくりの課題解決に空き家を活用する取り組みも増えています。例えば、空き家をリノベーションして地域のコミュニティ拠点にしたり、古民家をホテルやオフィスに改修するなど、企業やNPOと連携した事例が全国で広がっています。こうした活用は、地域に新しいにぎわいを生み出す可能性を秘めています。

空間情報で空き家を「見える化」! みんなで考える未来のまちづくり

伊東
空き家の活用が進むと、まちが元気になりそうですね。
中津
その通りです。空き家問題は、少子高齢化や人口減少を踏まえたまちづくりの中で考えることが重要です。居住地の適正化、地域活性化、移住・定住促進、福祉や子育て支援、防災対策などと連動した空き家対策を進めることで、持続可能なまちづくりが期待できます。
伊東
持続可能なまちづくりに重要なポイントは何でしょうか?
中津
空き家の状況を正確に把握し、まちづくりの課題と照らし合わせて活用方法を検討することが重要です。そのための情報共有ツールとして、GIS(地理情報システム)が有効です。
GISを活用すれば、空き家の分布、土地の利用状況や法規制、ハザード情報などの空間情報を地図上で重ねて表示し、地域の状況を「見える化」できます。
例えば、歴史的な町並みが残る地域では、保存すべき建物や活用可能な空き家を一目で把握できます。また、活用できる空き家は残し、活用が難しい空き家は早めに処分するなど、優先順位の設定にも役立ちます。
伊東
GISを活用して空間情報を分析すれば、新しい発見がありそうですね。
中津
そうですね。ただ、分析しただけでは何も変わりません。重要なのは、その地図をまちづくりにどう活かすかです。
そのためには、地図を囲んで「自分たちのまちをどうしたいのか」を地域住民・団体・企業・行政が一体となって話し合うことが望まれます。こうした協働により、空き家対策とまちづくりを結びつけることができます。
住民の方々の参加が、これからのまちづくりのポイント

空き家を「負の遺産」にしないために、私たちができること

伊東
地域社会の一員として、私たちにできることはあるのでしょうか?
中津
あります。例えば、将来相続する可能性があるなら、親が元気なうちに関係者と実家の今後について話し合っておくことが大切です。
また、空き家を購入し、リノベーションして住むという選択肢もあります。さらに、都会に住みながら地方の空き家を借りる「二地域居住」といった新しいライフスタイルが選べる時代にもなってきています。
具体的な取り組みができなくても、故郷や地域に関心を持つことが、空き家対策の第一歩になります。
伊東
お話を伺って、空き家は個人の問題であると同時に、地域全体の課題でもあることがよく分かりました。私も故郷や今住む地域の空き家対策を、調べてみようと思います。
中津
いいですね! 空き家を「負の遺産」ではなく「地域の資産」に変え、地域の未来を築いていくために、私たち一人ひとりができることから始めましょう。
私も、まちづくりの専門家として、誰もが安心して心地よく暮らせる地域の未来づくりに貢献できるよう、日々学びを深めながら業務に取り組んでいきたいと思います。
伊東
今日はありがとうございました。
中津
ありがとうございました。

本記事を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
この記事が、皆さんとともに学び、考えるきっかけとなれば幸いです。
よろしければ、あなたの大切な人や社会課題に関心のある方にも、ぜひシェアしていただけるとうれしいです。

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