捨てられたゴミとモラルのゆらぎ 技術が守る未来

捨てられたゴミとモラルのゆらぎ 技術が守る未来

身近にある不法投棄

河川敷や街角、公園など、ふと目に入る場所にポイ捨てされたゴミを見たことがある方は多いのではないでしょうか。ペットボトルや空き缶、小さなゴミから、粗大ゴミまで、私たちの生活空間のいたるところに不法投棄の痕跡が見られます。そんな光景を目にすると、「誰がこんなことを?」と憤りを感じる方も多いのではないでしょうか?
ゴミが放置されていれば、景観を損なうだけでなく、衛生環境にも影響を及ぼします。害虫の発生や悪臭など、周囲の住民にとって大きな問題となることもあります。
では、なぜ不法投棄はなくならないのでしょうか。
今回は、不法投棄について、衛星ソリューション部 空間情報技術一課の木村 篤史さんと、国土情報部 地理情報一課の井関 禎之さんからお話を伺った内容を踏まえて考えていきたいと思います。

ちょっとした気のゆるみが生む、モラルのゆらぎ

不法投棄は、一部の悪意ある行為だけでなく、「ちょっとした気のゆるみ」から発生することがあります。例えば、ゴミの分別が面倒だったり、処分方法がわからなかったりすると、「これくらいならいいだろう」と軽い気持ちでゴミを放置してしまうケースも少なくありません。 
このような行為は、人々のモラルに深く根ざしています。法律や罰則を強化しても、すべての違反を防ぐことは難しく、油断から起こりやすくなります。こうした現状に対し、国・自治体や地域団体が監視活動を行っていますが、それには膨大なコストと人手が必要となります。 

河川敷に不法投棄されてしまうゴミ

👉ここで知っておきたい法律のお話 
不法投棄は、廃棄物処理法(正式名称:「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」)により厳しく規制されています。個人が不法投棄を行った場合は、5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその両方が科される、ことを覚えておきたいものです。 

ゴミが捨てられやすい場所と課題

「ちょっとした気のゆるみ」からゴミを捨ててしまう。その行為は、人の目が届きにくい、つまり監視の目が届きにくい場所で起こりやすい傾向があります。また、空き地や放置された土地はゴミが隠れやすく、既にゴミが捨てられている場所は「捨てても問題ない」と思われ、さらにゴミが増えてしまうことがあります。

この問題を防ぐために、国や自治体では定期的な巡回を実施し、違反者を特定して対策を講じる取り組みを行っています。しかし、広範囲にわたる監視を人の手だけで実施するのは限界があります。 

こうした問題を解決するために、技術を活用した監視が注目されています。最近では、ドローンを活用した監視技術が導入され始めています。定期的に空から撮影することによって、不法投棄が行われた場所を特定し、迅速な対応を可能にするのです。

宇宙からゴミを監視する?衛星×AI技術の進化 
<インタビュー>

様々な技術革新によって、不法投棄の監視方法の進化に期待が寄せられています。その一つが、人工衛星の画像とAIを組み合わせた監視です。一体どんな技術なのか?
その内容を、衛星ソリューション部 空間情報技術一課の木村 篤史さんにうかがいました。

話し手

樋口
宇宙から不法投棄を監視する技術の研究が進んでいるようですね?
木村
はい。内閣府と県の事業で実証実験を行いました。実用化に至るまでに越えなければいけない課題がたくさんありますが、挑戦を続けています。
樋口
それは頼もしいですね!具体的にはどんな研究なんですか?
木村
人工衛星から撮影した画像をAIで解析し、不法投棄の可能性を見つける手法です。
衛星画像は広範囲を一度に撮影できることにメリットがありますが、今の技術では、画像がどこまで鮮明に映るかという「解像度」の影響を受ける抽出精度に課題が残っています。
ゴミが投棄されやすい場所の規模は、道路わきのような小さい範囲から広範囲まで様々です。現状の解像度だと空から見ただけでは、資材置き場なのか?ゴミが投棄されている場所なのか?の判別が難しい。そのため、鮮明に確認できる画像が必要なのです。
また、AIの学習に必要な「教師データ」と言われる情報もまだ十分ではありませんし、木陰や構造物の影なども上空からは死角になりやすいので、そういった面がクリアされていれば、実用化に近づくと思います。
樋口
現状では、まだ実用化は難しいということですね?
木村
そうですね。しかし、解像度が向上し、AIの教師データが蓄積されれば、抽出精度は確実に上がるでしょう。
また、GIS(地理情報システム)との連携も進んでいます。GISには、多種多様な情報を重ね合わせ、情報を見える化できる能力があります。それを使って、道路や建物の情報、裸地や構造物、森林や土壌などの情報、3次元の地形情報などを重ね合わせて精度を上げられないか?と、試行錯誤を続けています。
さらに、ゴミの投棄が発生しやすい場所を予測する「不法投棄ポテンシャルマップ」を作成する取り組みも始まっています。
樋口
これからも挑戦は続く!ですね。
木村
まさにその通りです。技術が進化すれば、宇宙から不法投棄の現場を検知する能力は確実に向上していくと思います。
しかし、宇宙からの監視だけでなく、ドローンや住民の監視の目とも融合する必要がありますね。
AI で変化を検出して不法投棄の早期発見を目指す

ドローンが切り開く未来への可能性とは? 
<インタビュー>

河川敷など、人目を避けやすい場所にゴミの投棄が増えやすい傾向があります。
そこで今、ドローンから撮影した画像を使って、効率よく監視する取り組みが進められています。その先進的な取り組みを、関西事業部 技術センター 国土情報部 地理情報一課の井関 禎之さんにうかがいました。

樋口
河川敷の不法投棄は、どうやって見つけているのですか?
井関
現状は、車や徒歩で巡回しながら監視員が定期的に目視で見つけることが多いです。ただ、住宅の近くにある小さな川などでは、まだまだ監視の目が行き届いていない上に、人員や時間がかかっています。
また、堤防からの目視では見えにくい場所が死角になってしまう、という問題もあります。
こうした問題を解決し、効率よく実態を把握するために、ドローンやAIの技術に期待が寄せられています。
樋口
具体的にはどういったものですか?
井関
カメラを搭載したドローンで人工衛星よりも低高度から撮影した画像をAIで分析し、不法投棄と思われる箇所を抽出する技術です。上空から地上の様子を広範囲で把握できるという意味では人工衛星と同じですが、ドローンはより鮮明に撮影できますし機動性も高いので、活用するメリットは大きいと思います。
ただ、法律やプライバシーの問題、ドローン自体の飛行時間、天候などの問題は残っています。
樋口
今後、技術が進歩していけば、問題もクリアされ、可能性も広がりそうですね!
井関
そうですね。現在、多くのドローンの飛行時間は数十分程度ですが、長時間飛行できるタイプも続々と登場していますし、AIによる分析の精度も向上してきています。
また、ドローンで撮影した画像だけでなく、河道や河川敷、堤防などの地図情報に加えて、植生などの土地利用に関する情報をGISと重ね合わせれば、これまで以上に精度も向上し、エリア全体の状況把握や不法投棄への対策にも役立てやすくなるでしょう。
さらに、最近になって整備が進んでいる河川に設置されているライブカメラによって、水が流れる量の変化を監視する災害対策だけでなく、不法投棄の監視にも利用できる環境が整いはじめています。
空からの視点と地上の監視を組み合わせることで、監視の目が行き届く。そんな未来が近づいてきているのではないでしょうか。
ドローンを使って監視する技術も進んでいる

モラルの再構築 技術の進化と共に

これまでの話で、様々な技術の進化による未来への可能性が見えてきました。
しかし、いくら技術が進化しても、最後に問われるのは生活する私たちの意識です。「誰も見ていないから」と軽い気持ちでゴミを捨てる行為を防ぐためには、一人ひとりがモラルを持って行動しなければいけません。ゴミの不法投棄者や不法投棄されたゴミを見つけたときは、市区町村の環境課や清掃課に場所や状況を伝えたり、専用アプリなどで写真付きで通報したりするなど、私たちにもできることがあります。

なにより、社会全体で「不法投棄は許されない」という意識を共有し、環境を守るための責任を持ち、そしてそれを、次代を担う子供たちにも伝えていくことが大切です。
「見て見ぬふり」をせず、地域の環境を守る小さな一歩を踏み出すこと。それが不法投棄のない社会につながります。
そして、私たちが向き合うべき課題は不法投棄だけではありません。ゴミそのものを減らし、資源として再利用することも持続可能な社会をつくるうえで欠かせない視点です。
技術の進化とともに、私たちの意識も変えていくことで、より良い未来を築くことができるのではないでしょうか。 

綺麗な街で安心して過ごせる地球を未来に残すために。

   

   

本記事を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
この記事が、皆さんとともに学び、考えるきっかけとなれば幸いです。
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