「津波防災の日」に考える 避難を妨げる2つのバイアス

11月5日は「津波防災の日」。1854年に安政南海地震(推定M8.4)が発生した日で、東日本大震災の教訓を踏まえて制定されました。

近い将来、発生が懸念される南海トラフ地震では、死者数は最大で29.8万人、そのうち、津波による犠牲が21.5万人と予想されています。
ただし、すぐ避難できる人の割合が20%から70%に増えれば、犠牲者は9.4万人まで大幅に減らすことができる、とも考えられています。この20%から70%という数値の幅は、すぐに避難できるにも関わらず、何らかの理由ですぐには避難できずに亡くなる方が多い、ということを意味しています。

このような「逃げ遅れ」が起きてしまう背景には、私たちの心の動きが関係しているのです。特に影響を与えるのが、「正常性バイアス」と「同調性バイアス」という2つの心理です。

「正常性バイアス」は、異常な状況に直面したときでも「きっと大丈夫だろう」と落ち着こうとする心の安定機能のようなものです。普段の生活では、不安を和らげる役割がありますが、緊急事態では危険を過小評価し、逃げ遅れる原因になってしまいます。

「同調性バイアス」は、集団の中にいるとついつい周りの人と同じ行動をとってしまう心理のことです。周囲の人の様子をうかがっているうちに避難のタイミングを逃すことも。逆に、誰かが率先して避難する姿を見れば、多くの人が動き出すきっかけにもなります。

南海トラフ地震では、東日本大震災と比べて、地震の発生から津波が到達するまでの時間が短く、地域によっては最短数分で押し寄せる、とも言われています。

速やかな避難が命の分かれ目となります。いま一度、災害時に私たちがどのような心理になり、どう行動するべきかを知り、職場や家庭内で知識をシェアすることから、防災を始めてみませんか。

   

(文:R.K)

自分ごとを、ひとりごと。編集室ブログ

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