萩の伝統的建造物と夏みかんのある風景

萩の伝統的建造物と夏みかんのある風景

山口県萩市の平安古(ひやこ)地区。
江戸時代に建てられた武家屋敷が立ち並ぶ。
白い土塀越しに見える夏みかんの木が花を開き、甘い香りを漂わせている。

この地区で夏みかんの木が多くの武家屋敷にあるのは理由がある。
明治時代、生活に困窮する士族の収入源とするため、苗木が配られたのだ。
これが奏功し、明治22年には、夏みかんの果実と苗木の収益が、
萩の財政を上回るまでになったという。
幕末に藩庁が萩から山口に移ったことによる人口流出も、
この夏みかん栽培が一定程度、緩和する役割を果たしたそうだ。

   

今日、萩市は平安古地区を含む4地区を、伝統的建造物群保存地区に指定している。
保存地区では建築物の増改築は許可制となっているが、
修理や改修にかかる費用の一部を市が補助している。

しかし、許可基準に沿って伝統的な技法で外装を補修しつつ、
現代の生活に適うように内装を改築することができる大工は、そう多くはない。
また、江戸時代の屋敷を補修するための木材も、安価ではない。
そのため、継続使用を諦めて、古民家を市に寄付する人もいる。

市はこれを町並み交流館などに活用して、公開している。
しかし、その管理費用は、観覧料収入を大幅に上回っているのが実情だ。
そこで、市は、民間での活用を模索し始めている。
たとえば、古民家の所有権を市が持ったまま、
施設の運営を民間事業者に任せるなどだ。

   

旅の最後に立ち寄った道の駅には、夏みかんの加工品が並べられていた。
丸漬やマーマレードといった昔ながらの品のほか、
ゼリーやドレッシング、入浴剤などの新しい品もある。
人口減と古民家の空き家化を防ぐほどのヒット商品の出現を祈りつつ、
夏みかんのソフトクリームを食した。
素材の良さを活かした現代的な味がした。

   
(文:T.O)

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