日本唯一の砂漠は、火山が残した記憶だった

日本唯一の砂漠は、火山が残した記憶だった

日本に砂漠がある。

そう聞くと、多くの人は驚くかもしれません。


伊豆大島にある「裏砂漠」は、国土地理院の地図に「砂漠」と表記されている日本で唯一の場所です。

もっとも、本来の砂漠の定義には当てはまりません。
年間降水量が極端に少ないわけではなく、むしろ雨は十分に降る。
それでも砂漠と呼ばれるのは、植物が育ちにくい環境が広がっているからです。

地面を覆うのは黒い火山灰、そして無数の穴が空いた火山岩「スコリア」。
強い風が吹き抜け、広大な荒野が続く。
その風景は、まるで地球上ではないどこかの惑星を歩いているような気分にさせられます。


かつて大島には「表砂漠」と「裏砂漠」が存在していたそうです。
ところが、1950年から1951年にかけての三原山噴火で流れ出した溶岩が表砂漠を覆い、その風景は過去のものとなりました。現在残っているのは裏砂漠だけです。

そして大島の火山活動は、その後も続きます。

1986年11月、三原山が噴火しました。
 

1986年12月1日 伊豆大島全域モザイク写真と溶岩流の分布状況

山頂火口から始まった噴火は山腹へと広がり、島民全員が避難するという前例のない事態となってしまいました。

私たちは今、「日本唯一の砂漠」という少しロマンを感じる言葉でこの場所を語っています。
しかし、その風景を作り出したのは火山であり、その火山は時として人々の暮らしを脅かしてきた存在でもあることを忘れてはなりません。


見とれてしまう広大な裏砂漠の景色。
けれど、その黒い大地は長い火山活動の積み重ねによって生まれたものです。
そして1986年の噴火は、その火山の力が決して過去のものではないことを私たちに示した出来事でした。

日本唯一の砂漠である、伊豆大島の裏砂漠。
しかし、その風景は砂漠というよりも、火山が残した記憶に見えます。

   

(文:永塚 和彦)

   

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