増加する土砂災害から身を守るには?
知っているようで 実は知らない「土砂災害」
毎年6月は特に雨が多い時期です。近年は温暖化の影響により、7月~8月にかけてもゲリラ豪雨など大雨が降りやすくなっています。それと同時に、土砂災害のニュースもよく耳にします。しかし、「自分には関係ない」と他人事に感じている人も多いのではないでしょうか。 実は、土砂災害は山間部だけでなく、都市部の住宅地でも発生しています。土砂災害とはそもそも何なのか。どのような場所で起きやすいのか。そして、それに対してどんな対策が取られているのか。防災技術部 砂防課の坂田 剛さんにお話を聞きました。
プロフィール

話し手 坂田 剛(さかた つよし)
株式会社パスコ 中央事業部 防災技術部 砂防課
※所属は取材時のもの
2013年入社し、主に土石流や急傾斜地の調査・計画業務に従事。
プロフィール

聞き手 足立 那奈
地球の学校 編集室
近年、増加傾向が続く土砂災害
「土砂災害」という言葉はよく聞きますが、どんな災害なのかよく知りません。わかりやすく教えてもらえませんか。
土砂災害は、大雨や地震などがきっかけで、山や斜面の石や土砂が大量に崩れ落ちる土砂移動現象が、人や建物に被害を与える災害のことです。主に「土石流」「がけ崩れ」「地すべり」の3種類があります。
土石流は、山腹や川底の石や土砂が長雨や集中豪雨などによって一気に下流へと押し流される現象です。時速20~40kmもの速さで流れ、周辺にある建物等に強い衝撃を与えます。
がけ崩れは、雨や地震の影響で急激に斜面が崩れ落ちる現象です。突発的に発生することが多く、逃げ遅れによる痛ましい被害をもたらします。
地すべりは、斜面が地下水などの影響で大きな土塊がゆっくりと広範囲に移動する現象です。コンクリートなどで宅地や道路脇に作られている壁(擁壁)のひび割れや道路の亀裂など、比較的前兆が出やすいため、他の現象と比べ、事前避難などの対応がしやすい場合があります。
土石流は、山腹や川底の石や土砂が長雨や集中豪雨などによって一気に下流へと押し流される現象です。時速20~40kmもの速さで流れ、周辺にある建物等に強い衝撃を与えます。
がけ崩れは、雨や地震の影響で急激に斜面が崩れ落ちる現象です。突発的に発生することが多く、逃げ遅れによる痛ましい被害をもたらします。
地すべりは、斜面が地下水などの影響で大きな土塊がゆっくりと広範囲に移動する現象です。コンクリートなどで宅地や道路脇に作られている壁(擁壁)のひび割れや道路の亀裂など、比較的前兆が出やすいため、他の現象と比べ、事前避難などの対応がしやすい場合があります。
★参考:土石流・がけ崩れ・地すべりについて
兵庫県CGハザードマップ内防災学習のページ
(http://gakusyu.hazardmap.pref.hyogo.jp/bousai/dosha/learn01.html)
兵庫県CGハザードマップ内防災学習のページ
(http://gakusyu.hazardmap.pref.hyogo.jp/bousai/dosha/learn01.html)
土砂災害の被害は増えているのですか?
全国の土砂災害発生件数は増加傾向にあります。国土交通省の公表資料によると、1982年の集計開始以降、2023年までの年平均の発生件数1,100件強に対して、2024年までの直近10年では約1,500件と大幅に増加。温暖化に伴う気候変動で、豪雨や長雨が増えていることが主な要因と考えられます。また、大きな地震が発生した年も、土砂災害が多発する傾向にあります。

国土交通省 報道発表資料「令和6年は過去平均(統計開始以降)を上回る土砂災害が発生」(2025年1月27日)より
どんな被害が出るのでしょうか?
建物や家が多くある場所で発生した場合は、被害が大きくなります。過去には、広島市で土石流災害が発生し、多くの住宅が全壊する被害が出たこともあります。特に夜間や大雨時は避難が難しく、命に直結する危険があります。
ハザードマップでリスクを正しく知ろう
土砂災害が起きやすい場所というのはあるのでしょうか?
各都道府県では、土砂災害被害の防止・軽減を目的に、土砂災害による被害を受けやすい場所を土砂災害警戒区域と定め、住民への周知や避難体制の整備を図っています。
その対象は、土石流は渓流の出口から土砂が氾濫・堆積すると想定される地盤の勾配が2度以上のエリア、がけ崩れは傾斜30度・高さ5メートル以上の急傾斜地などです。
こうした警戒区域は実は身近にあり、地形の高低差が大きく、家が立ち並ぶ住宅地にも多くあります。日本は平坦な場所は限られているので、該当場所は全国にたくさんあると思います。
その対象は、土石流は渓流の出口から土砂が氾濫・堆積すると想定される地盤の勾配が2度以上のエリア、がけ崩れは傾斜30度・高さ5メートル以上の急傾斜地などです。
こうした警戒区域は実は身近にあり、地形の高低差が大きく、家が立ち並ぶ住宅地にも多くあります。日本は平坦な場所は限られているので、該当場所は全国にたくさんあると思います。

国土交通省 資料「土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域等について」より
自分が住んでいる場所の危険性を知るには、どうすればいいですか?
お住まいの自治体のホームページから、土砂災害ハザードマップを確認してください。黄色が土砂災害警戒区域で、これは地形の条件だけで指定される範囲が決まります。赤い区域は土砂災害特別警戒区域で、地形の条件に加えて、土砂が崩れた場合に建物が壊れるような大きな力が働く場所を示しています。特別警戒区域では、新築や増改築に規制がかかるなど、法律上の制限がかかります。

ハザードマップを見る時の注意点はありますか?
警戒区域は、住宅があるエリアしか設定されていない場合が多いので、色のないエリアだから安全、とは限りません。住宅が無い場所でも、土石流やがけ崩れ等の土砂移動現象は発生します。
また、自宅だけでなく、通勤や通学路にも警戒区域がないか確認してください。実際、道を歩いている最中にがけ崩れに巻き込まれた事例も発生しています。
また、自宅だけでなく、通勤や通学路にも警戒区域がないか確認してください。実際、道を歩いている最中にがけ崩れに巻き込まれた事例も発生しています。
最新技術と地道な調査でリスクを検知
土砂災害のリスクが高い場所は、どのようにして調べているのですか?
航空写真や衛星画像、飛行機からのレーザー計測、現地調査など、様々な方法を組み合わせて調べています。
航空写真と衛星画像の解析は広いエリアを効率的に調査できますし、飛行機からのレーザー計測はより詳細な3次元データを取得できます。また、衛星で地盤の動きを測定する方法もあり、地すべりのような、広い範囲でゆっくり動く現象の監視もできます。
航空写真と衛星画像の解析は広いエリアを効率的に調査できますし、飛行機からのレーザー計測はより詳細な3次元データを取得できます。また、衛星で地盤の動きを測定する方法もあり、地すべりのような、広い範囲でゆっくり動く現象の監視もできます。


ただ、計測した時期や植生の変化で誤差が出ることがあります。そこで、現地調査も行い、斜面の高さや角度を実際に測って補正します。
こうして集めた情報をGIS(地理情報システム)で統合し、過去の災害履歴などと重ね合わせて危険度を判断します。これが土砂災害警戒区域を指定する基礎になります。
こうして集めた情報をGIS(地理情報システム)で統合し、過去の災害履歴などと重ね合わせて危険度を判断します。これが土砂災害警戒区域を指定する基礎になります。
災害の防止・軽減をめざす二つの対策
さまざまな情報から土砂災害対策の元となるデータが作られていくのですね。それをもとにした具体的な取り組みを教えてください。
土砂災害を防いだり被害を軽減したりするための対策を「砂防」と呼び、大きく「ソフト対策」と「ハード対策」に分けられます。
ソフト対策は、調査で得たデータを使ったハザードマップの作成や避難体制の整備など、住民の安全に直結する取り組みです。
ハード対策では、土砂の流れをコントロールするための施設等を整備します。例えば、土石流の対策では「砂防堰堤(さぼうえんてい)」という構造物を渓流に設置します。砂防堰堤はコンクリートで土砂をせき止める不透過型と、格子状に組んだ鋼管で土砂や流木を引き留める透過型があり、近年は流木被害の増加から透過型の設置が増えています。
ソフト対策は、調査で得たデータを使ったハザードマップの作成や避難体制の整備など、住民の安全に直結する取り組みです。
ハード対策では、土砂の流れをコントロールするための施設等を整備します。例えば、土石流の対策では「砂防堰堤(さぼうえんてい)」という構造物を渓流に設置します。砂防堰堤はコンクリートで土砂をせき止める不透過型と、格子状に組んだ鋼管で土砂や流木を引き留める透過型があり、近年は流木被害の増加から透過型の設置が増えています。

こうしたハード対策を進める際には、地形・地質・降雨量、過去の災害事例などから土砂災害のリスクを評価し、人命、社会的影響、災害頻度を踏まえて施設をどこに設置するか計画します。ただ、全国には危険箇所が多く、すべてに対策することは難しいため、優先度をつけて整備を進めています。
効率的な施設の維持管理がますます重要に
砂防施設は、どのように管理しているのですか?
基本的には5年ごとに点検します。各施設の健全度をA、B、Cの3段階で評価し、BやCと判定された施設は、より細かい頻度で点検を行います。
山の斜面などにある施設も多いと思いますが、点検は大変そうですね。
そうですね、点検は主に人力で実施しており、特に、傾斜が急な地形に設置された砂防施設の点検では、点検技術者の不足や大きなコストや時間がかかることなどが問題になっています。その解決策の一つとして、最近では砂防施設の点検にドローンを活用する取組みが進められています。例えば、自律飛行ドローンで点検を行った場合、徒歩で4時間かかる点検が、1時間程度まで短縮することができたという報告も出されています。また、災害直後に撮った衛星画像から施設周辺の状況を把握したり、AIを使って点検写真から異常箇所を自動で抽出する取り組みが進んでいます。こうした最新技術を活用して、砂防施設を効率的に維持管理していくことが、今後ますます重要になると思います。
日頃からの備えで被害を最小限に
土砂災害対策について、私たち自身でも何かできることはありますか。
まずは防災意識を高めることです。ハザードマップで避難場所を確認し、家族間で情報共有します。普段から土砂災害が起きる可能性を意識しておけば、いざという時にも迅速に避難できます。
以前、長野県のある地域で土石流が発生し、家が埋まるほどの被害が出た際は、発生前に地元の区長さんたちが早めに避難を呼びかけ、人的被害が出なかったことがありました。
以前、長野県のある地域で土石流が発生し、家が埋まるほどの被害が出た際は、発生前に地元の区長さんたちが早めに避難を呼びかけ、人的被害が出なかったことがありました。
「自分は大丈夫」と思わず、日頃から備える意識が大事なのですね。
大雨や台風では、まず天気予報に注意してください。1時間の雨量が50㎜以上などの「非常に激しい雨」が予想される地域では、とりわけご用心を。気象庁が提供している防災アプリ「キキクル」で、お住まいの場所で大雨や土砂災害の危険情報が出ているかをチェック。避難指示を待たずに行動するくらいの心がまえが必要です。「危ないときは誰かが教えてくれるはず」と考えるのではなく、自分から情報を取りに行く姿勢が欠かせません。


(国土交通省「ダイナミックSABOプロジェクト」より)
防災意識を高めるために、砂防施設を実際に見るのも有効な手段だと思います。最近は「インフラツーリズム」といって、砂防施設を見学できるツアーも開催されています。こうした機会を通じて、砂防をより身近に感じてもらえたらと思います。
土砂災害について、漠然とした不安を抱いていましたが、お話をうかがって、正しい情報を知って行動に移すことの大切さがわかりました。私の身近にも危険が潜んでいるかもしれないと思ったので、ハザードマップや避難所の確認など、自分でできることから始めたいと思います。今日はありがとうございました。
ありがとうございました。

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