布引の滝が問いかける自然の保護と利用

布引の滝が問いかける自然の保護と利用

新幹線の新神戸駅から15分ほど歩いて、布引の滝を訪ねた。この滝を詠んだ歌の碑が遊歩道に沿って並んでいた。その中で、この歌をとても気に入った。

 松の音琴に調ふる山風は滝の糸をやすけて弾くらむ (紀貫之)

「琴の音のような調べの、松に吹く山風は、滝水を糸にして弾いた音であろう」という意味である。この歌の作者は滝水に目を向け、滝音と山風の音の調和に耳を傾ける。視覚のほか聴覚も使い、滝のほか木々も含めて、豊かな自然を叙している。

明治初期、この遊歩道や歌碑は民間団体によって設けられた(一部の歌碑は、近年復元)。この団体は、官有林(国有の森林)を含む一帯を私設公園にしようとしていた。財政難から大蔵省(財務省と金融庁の前身)はその官有林を団体に払い下げようと検討する。そこへ兵庫県知事が「行楽地にして課税する方がよい」と進言する。
同じ頃、上野の病院予定地を公園にするようオランダ人医師が政府に提案し、岩倉使節団も欧米で公園の重要性に気づいていた。こうした流れを受け、明治6年、太政官は府県に「国所管の景勝地等から公園の適地を選べ」と布達する。これが日本における公園制度の始まりである。こうして布引や上野の木々は伐採を免れた。

今日、国などは、自然公園法により国立・国定公園内の優れた自然の風景地を保護しつつ、適切な利用を増進しようとしている。たとえば、工作物の建築、木竹の伐採、土石や植物の採取、動物の捕獲、車馬の使用などが、許可や届出の対象にされている。
近年では、風力発電や地熱発電といった再生可能エネルギーの利用と自然保護との両立が問題になっている。

滝を見た帰り道、川の水を引き入れた公園で、子供たちがはしゃいでいた。水の音と子供たちの声が響きあう。
これらの音の調和が永遠に聞かれるように、自然の利用と保護を両立せねばならぬと思った。

(文:T.O)