「みーんみーん」と「シャワシャワ」 ―転勤して気づいたセミの東西差―

「みーんみーん」と「シャワシャワ」 ―転勤して気づいたセミの東西差―

夏と言えばセミの声。

「みーん、みーん」と聞くと、多くの人が夏休みの風景を思い浮かべるでしょう。
しかし、この「みーんみーん」の主役であるミンミンゼミは、実は関東と関西で事情が少し違います。
ミンミンゼミは北海道から九州まで分布していますが、都市部では東日本でよく見られ、西日本ではクマゼミの方が目立ちます。
 
私はこれまでの転勤で、福岡、広島、大阪、横浜、そして仙台に住む機会がありました。
どの街も夏になればセミが鳴くのですが、その「夏の音」が地域によって驚くほど違うことに気づきました。
 
福岡や大阪では、朝からクマゼミの大合唱です。
「シャワシャワシャワ」「ワシワシワシ」という力強い鳴き声が街全体を包み込みます。
初めて大阪の夏を迎えたときは、その音量に圧倒されました。
まるで街そのものが鳴いているような感覚です。
クマゼミは西日本の都市部で優勢なセミとして知られています。
 
一方、横浜や仙台では「みーん、みーん」と鳴くミンミンゼミが夏の主役でした。
子どもの頃にテレビの『サザエさん』で聞いていた夏の音そのものです。
なるほど、サザエさんの夏は関東の夏だったのか、と妙に納得したものです。
 
広島はクマゼミもミンミンゼミも聞こえました。
しかし印象としては、やはりクマゼミの存在感が強かったように思います。
瀬戸内の温暖な気候を反映しているのかもしれません。
 
こうして各地を歩いてみると、日本の「夏の音」は全国共通ではないことが分かります。
同じ夏、同じ暑さでも、福岡では「シャワシャワ」、横浜では「みーんみーん」、仙台ではヒグラシの「カナカナ」が夕暮れを彩ることもあります。
地域ごとに異なる音風景が存在するのです。
 
さらに興味深いのは、最近になってクマゼミが関東地方でも増えていることです。
温暖化や都市のヒートアイランド現象の影響で、かつては西日本中心だったクマゼミが北へ分布を広げていると考えられています。
 
もし今後も気温上昇が続けば、東京や横浜でも「みーんみーん」より「シャワシャワ」が当たり前になるかもしれません。
 
転勤族として各地のセミの声を聞き比べてきた立場からすると、セミの鳴き声は単なる夏の風物詩ではなく、地域の自然環境や気候変動を映し出す"生きた環境指標"のように感じられます。
 
夏の日、耳を澄ませてみてください。
あなたの町で聞こえるその声は、ミンミンゼミでしょうか。それともクマゼミでしょうか。

   

(文:高岸 且)

   

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