行人坂で絵を描く

行人坂で絵を描く

2024年は歌川広重の、2025年は葛飾北斎の絵を見に、太田記念美術館の特別展に足を運んだ。
広重(初代)の「目黒行人阪之図」が描いているのは、行人坂の上。行人坂は、通勤でも通る急な下り坂で、かつては富士見の名所であった。この絵に描かれた富士は、現実に見える富士よりも大きい。
一方、北斎の「下目黒」が描いているのは、行人坂の下。この絵に描かれた富士や行人坂、目黒川にかかる太鼓橋は小さい。絵の主役は、下目黒での生活。田や畑、藁塚などの景色、坂を登る農夫、飼う鷹を手に乗せている鷹匠、幼児を背負って子を連れて歩く婦人などだ。人々の暮らしをつぶさに観察しなければ、このような絵は描けないだろう。

近年は、航空機や人工衛星などの測量だけでなく、MMS(モービルマッピングシステム)を活用するなど、測量の観測点は上空から地上へと広がっている。こうした技術によって作られる3次元都市モデルは、人の目線に近い使い方も増えてきている。
たとえば、都市景観の検討や住民参加によるまちづくり、ナビゲーションや観光案内、交差点における死角改善の検討、避難誘導、屋外広告物の効果の検討、ウォーキングによる健康づくりの支援などだ。
これらの利活用をさらに拡大させるためには、絵を描くのと同じように、人々の暮らしをつぶさに観察することに加え、そのニーズを深く理解することが大切だと感じる。

色々な視点で描かれた独創的な絵があるからこそ、特別展に行くのは楽しい。それと同じように、写真や地図にも色々な視点と創造性があってほしい。人々の暮らしの観察の中から新しい視点で描いた将来の絵を、この下目黒から発信していきたい。 

   

(文:T.O)