「最初は観測装置の故障かと思った」 想定外のオゾンの減少に向き合った人たち
紫外線は、肌のシミやシワの原因。
白内障や皮膚がんの原因にもなるので、紫外線を過度に浴びないようにしなくてはならない。
と、ここまでは、女性を中心によく知られた話だ。
1982年9月、第23次南極観測隊の忠鉢繁隊員は、昭和基地でオゾン量の急減を観測した。
第7次隊から続くオゾン量観測でこんなことは一度もなかった。
冷蔵庫やエアコンなどに使用されていた「フロン」がオゾン層を破壊するとの仮説はあったが、その影響はごく僅かだと考えられていた。だから、忠鉢は観測装置の故障を疑った。
しかし、何度調べても装置に異常がない。
オゾンは、太陽からの有害な紫外線を吸収している。
オゾンがさらに減れば、紫外線でDNAが壊される陸上生物は危機的な状況に陥る。
この重大事態を、1984年、忠鉢は国際オゾンシンポジウムと英文論文誌で発表したのだ。
しかし、発表会場で反響はなかったという。
「昭和基地特有の現象にすぎないはずだ」と受け止められたのだろう。
その翌年、状況が一変する。
英国の南極観測基地の上空における同時期のオゾンの減少を、J.C.Farmanらが科学誌「Nature」に発表したのだ。
また、同じ年に、オゾン層の保護のためのウィーン条約が採択され、オゾン減少の過程を各国が協力して研究することになった。
その後、米国を中心とした科学者による大気の観測で、オゾン破壊の原因はフロンだと強く示唆された。
さらに、アメリカ航空宇宙局(NASA)の人工衛星の観測データの再調査から、オゾン層の穴、すなわちオゾンホールが南極大陸よりも広いことが判明した。
こうして、フロンなどの排出削減を規定するモントリオール議定書が1987年に定められた。
それからオゾン量は緩やかに回復しているものの、毎年、南極でオゾンホールが発生している。
1980年頃のオゾン量に回復するのは2060年代と予想されるため、今もオゾン量の観測が続く。
2011年には北極でもオゾンホールが発生し、北海道などでオゾンの軽度な減少が観測された。
南極で長年にわたり観測を続けていた人がいたからこそ、オゾンの異変は見過ごされずに済んだ。
いち早く異変に気づくための常時観測は、今も重要である。
(文:大場 亨)
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