観光地になる前からあった風景【備瀬のフクギ並木】
沖縄本島北部・備瀬の集落にあるフクギ並木を歩きました。
"福を呼ぶ木"として、観光ガイドにも載っている場所ですが、
木々に囲まれた道に足を踏み入れた瞬間、
ここが「見せるための景色」ではないことに気づきました。
フクギは、防風林として集落を守るために植えられてきた木です。
台風の多い沖縄では、家の周りを囲むようにフクギを育て、
強い風から暮らしを守ってきたそうです。
高く伸びた幹と、密に重なる葉は、
景観以上に生活を守る壁としての役割を担っていると感じました。
並木道を歩いてみると、道の幅は決して広くなく、まっすぐでもありません。
すぐ近くにはリゾートのにぎわいもあり、
隣接する海からは子どもたちの楽しそうな声も聞こえてきます。
1975年に開催された沖縄海洋博をきっかけに、この地域が観光地として知られるようになったそうですが、それでも、この並木の中だけは静かで落ち着いていました。
そばには住宅があり、生活の延長線上に後から観光が加わった、
そんな順番が感じられました。
不思議と、観光客として訪れた私にとっても居心地がよく、
温かい空気とたくましい木々が優しく迎えてくれたような気もしました。
自然を力で抑え込むのではなく、その力を受け止め、共に生きる。
フクギ並木は、自然災害と向き合ってきた人びとの選択を、静かに伝えていました。
こんな風景が、この先も変わらず受け継がれていってほしいと感じました。
(文:足立 那奈)
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